…だけどあたしが涙を流すのには早すぎる。
力強いはずの疾風の翼は、頑張って飛び続けたせいで傷だらけだ。
―――いい加減その呪縛から解いてあげたい。
あたしはただその一心で、有無を言わせず疾風の手を掴むと大悟の病室に急いだ。
変わらず“近藤大悟”と書かれたプレートの掛かる病室前は何の変化もなく、本当に起きたのかと少し疑ってしまう。
けどそれはこの時だけで、部屋に入った瞬間あたしも、何も言わずただあたしに引っ張られているだけだった疾風も、言葉を失った。
この前までいつ目覚めるか分からないと言われていた人間が、自分の目の前で動いて喋っている。
それはとても衝撃的で、夢と錯覚してしまうような奇跡を見た瞬間。

