焦げ茶色の髪に、緩くかかったパーマ。


『なぁ疾風、一個だけ聞いてもいい?』


…きっとあの子が仁美ちゃん―――なんだろうけど。


『仁美ちゃんって、誰?』


首を傾げ、あたしは問う。


疾風の瞳が少しだけ見開かれ―――…


ジージージーと、アブラゼミのうるさい真夏の午後だった。


それは、人という脆くて儚い生き物が、短い人生で最も濃い時間を生きる、とても短い青春の一ページ。


それが一つの区切りをつけようとしている事を、この時のあたしは気付いていなかった。