『…げっ』


軽く手櫛で髪を整えて窓をすり抜け、外の空気を感じた瞬間に一層大きさを増したバカ蝉たちの鳴き声。


あまりのうるささに両手で耳を押さえるものの、隙間から音が洩れてあまり意味が無い事に気づき落胆。


『はぁ…』と溜息を吐きつつ、どうにかバカ蝉の集落地であるあたしの家付近を離れ駅前まで来ると、嫌な鳴き声もマシになった。


『そんなに鳴いたら早死にするで』


…なんて、死んだ奴から言われるとは蝉も思ってなかっただろう余計なお世話を焼き―――


いや、正確には嫌味をブチかましたあたしは、いそいそと日向の家へと歩を進めた。