「陽菜」 少しして、背後から聞こえた声に肩が震えた。 今は聞きたくなかった彼の声。 小さい頃から聞いてきた彼の声。 「お前なぁ、補習終わる頃には教室来るってゆってたくせに、何でまだ屋上おんねん」 その声で何度意地悪を言われただろうか。 その声に何度救われただろうか。 「まぁどうせ陽菜のことやから、まだ屋上やろうとは思ってたけど」 たまに優しくて、安心できて―――…だから今は聞きたくなかったのに。