青ざめたその顔に、あたしの心は困惑に満ちた。 ドクンドクンと心臓が嫌に音を立てて、 『…俺、今日は帰るわ』 差し伸べた手が、ふらりと立ち上がった疾風の横を通り過ぎる。 空気を掴んだ手のひらが、やけに虚しく感じた。 『疾風っ…』 『ごめんな、陽菜。ちょっと体調悪いだけやから…気にせんでいい』 軽く後ろ手で手を振って、部屋から出ていこうとする疾風に文句を言いたくなる。 ――そんな顔見たら、気にするに決まってるやん。