その表情は少し暗くて、胸に引っ掛かったのは確かだった。 『え…でも、疾風前に言ってたやん。バイクで―――…』 『とにかく、もうハッキリと思い出されへんのや』 あたしの声を遮って強く言った疾風に、喉にキュッと言葉が詰まった。 微かに彼の声が震えている気がするのは、あたしの気のせいだろうか? 『疾風…』 小さく名前を呼び、その震える拳に触れると、疾風は驚いた様に顔を上げる。