尚も怖い顔を続けて歩いていく日向にあたしは首を傾げ、


『ばいばい、お母さん』


届かない声だけど、窓から景色を眺めるお母さんに手を振った。


『日向待ってー!』


そして閉まったドアをすり抜けると、少し先に見えた広い背中を追い掛けた。


…何であんな怖い顔してたんやろか?


そう思いながら日向に追い付いて手を握ると、もうさっきの怖い顔はどこにも無くて…


『よし、日向ん家帰ろー』


「こら、陽菜引っ張るなぁ」


ぐいぐいと手を引くあたしに、日向はいつもの如く優しい笑みを浮かべる。


その笑顔を見ながら、あたしは困惑の色を胸に隠した。


さわさわと窓の外で草木が揺れる。


夏休みも8月に入り、あたしも幽霊の体が馴染んできた頃―――…


少しずつ、気が付かない位のスピードで、あたし達の環境は変わろうとしていた…。