「おぅ」


振り向いてニィッと歯を見せて笑うと、病室を後にした。


日向が出て行った後にはふわっと風だけが過ぎてって、香水の残り香を置いていく。


―――…でもそれを見送っていたあたしの足は、その場から動けなくなった。


人懐っこい笑みを浮かべていた日向の横顔が、病室を出るその刹那の間に怖い物へと変わったからだ。


その変貌ぶりは凄まじくて、もうこんな怖い日向の顔は見たこと無いんじゃないかって程。