だけど振り返った日向が優しく笑ったりするから、もう限界だったあたしは軽く手招きする彼の背中に抱き着いた。 ふわり、シャツから香る日向の匂い。 「大丈夫や」 響いたその声はやけに強くて、胸がきゅうっと痛む。 「俺等が陽菜の存在を忘れへん限り…陽菜は俺等の側でおってくれるよ」 続くように発せられた言葉はやっと止まった涙をまた誘い、お母さんは顔を上げ――… 「そうやな」 噛み締めるように言った後、真っ赤になった目を細め笑った。