――…それに気付かなかったあたしはバカだ。 そう思うと涙が溢れそうになって、腕で目元を押さえた。 もう片方の手でぎゅっとスカートを握るあたしに、お母さんの涙混じりの声が聞こえる。 「私っ…あの日の朝、陽菜と喧嘩してもうたんや…」 聞くのも辛くなるくらい悲痛な声色に、あたしの記憶は揺すられる。 ―――「もう分かってるってゆうてるやんか!」 ―――「今度単位落とすことになったら、塾にブチ込むから!」 ―――「お母さんのアホ!」