『ただいまぁ〜…』 ドアを擦り抜けて、家の中に入る。 無駄に大きく“ただいま”と言ってみるけれど、当然の事ながら返事はなかった。 “おかえり” ただ、この一言だけでいいのに、今あたしに言ってくれる人はこの家にいない。 前はお母さんが毎日欝陶しいくらいに言っていた事なのに、もうウザイと思う事もないんだろう。 分かっている事なのに、少し寂しく感じた。