―百合色―

だんだん見えてくる、
俺の大好きな場所。


近付くにつれ、心臓が騒ぎだす。


『…ゆ…り…』


不安…怖い…不安…怖い…

二つの言葉が、俺の中で遊んでいる。


気持よさそうに踊る桜の木。


楽しそうに笑っている桜の花びら。


百合の姿はなかった─…


まだ時間が早いのかな?


俺はベンチに腰かけ、
携帯を開く。


『11時15分…』



百合はいつ来るのだろうか?


いや、来ないかもしれない。


『…百合…百合…』


携帯を持つ手に汗が溢れてくる。


俺は下を向き、
目を瞑り、百合が来るのを待った。


桜の花びらが、俺の周りに落ちていく。


ピンクの鮮やかな色をした花びらが、俺の目に写る。


『来ない…かな』


俺は待った。

百合が来るのを──……



──…もうここへ来て二時間が経とうとしていた。


『…来ないか…』


もう半分諦めかけていた。

来ないと思い込んでいた。


だが、俺は確かに聞いたんだ。


紛れもなく、君の声─…