だいぶ温かくなった手をポケットから出し、
百合に近付いた。


『百合…』


その瞬間、桜の木がザワザワと揺らいだ。


百合は俺の方をゆっくりと見る。


街の街灯で、百合から流れる涙が反射した。


…終りだ。


俺の時間が止まった─…


『百合…俺…』


『光輝は私が嫌い?』


震える声で百合は言った。

風が…冷たい。

温かくなった手が一気に冷めた。


『…嫌いじゃない…百合は?』


『私は光輝だけ…』


俺は何か勘違いをしていたようだ。


人の気持ちは、
その本人にしか分からない。

俺は百合の気持ちを聞かずに、勝手に怒り、


本当に最低な男だ。


でも…


また俺は繰り返すだろう。

このような事を…


だから─…


俺は百合にこう言った。