―百合色―

『マナ~帰ろ!』


今日俺は一日、
浮かれていた。


『うん!』


俺はマナと手を繋いで歩いていく。


沈むオレンジの夕日を目指して。



『ごめんね?光輝?』



『何が?』



『ろくに遊んだり出来なくて…』



俺達は付き合ってから、
遊んだりしなかった。


マナが塾の勉強が忙しくて、遊ぶ暇がなかったから。


俺は寂しかった…
でもマナの為だから我慢した。



『いいよ?大丈夫。
受験終わったらいっぱい遊ぼうな!』



『うん!』



二人の影が、
まるで俺達がひとつみたいになっていた。



この影がずっと…

ずっと変わらないで欲しい─…



俺の小さな願いだった。



夏の景色は、ゆっくりと、秋の景色に変わっていく。


もう少しだ──…


受験生活が終わるのは…


もう少しだ…


マナとずっと一緒に過ごせるのは──…