―百合色―

ドクン…
ドクン…


同じ音で、徐々に速くなる俺の鼓動。



『俺…俺…』


さっきから《俺》しか出てこない。



俺って根性なしだな…


言え…言うんだ…


心の中にいる、もう一人の自分が、叫んでいる──…



『俺…その…何だろ?
うん…えっと…』



手汗かいてきた…

早く言えよ自分…





『俺マナが…好き…』


『だから、同じ高校に行けたらなって…』



言えた…
ちゃんと言った…

時間かかったけど…
ちゃんと言った…



あとは返事を待つだけだ…


マナは、下を向いたまま、何も言わない。




あぁ…ダメなんだ。




気持ち良い風が、
冷たい風になって、俺の心を刺すみたいだ…



『嫌…だよな?』



『違う…違うの!嬉しくって…私も光輝と同じ高校行きたかったから…
私も光輝が好き!
だから嬉しい!』



心の中の自分は諦めていたから、マナの言った言葉を理解するのに時間がかかってしまった。