"桜色の、、"




「ねぇ、しんちゃん」


「んー?」


色あせた芝生の上に、再び寝ようと横になった心を上から覗き込む。


「あ、あのさ…」


「んー?」


「この"桜色の糸"ってさ」


「んー?」


「………」


心の反応が癪に障った私は、心を上から睨み付けてみたが、目を閉じていて心は気付かない。

私は話すのを止め、心から視線を逸らした。



「あお」


「……」


「あーお」


「……」


「あおちゃーん」


「……」


隣にいる心の気配が動いたが、私は白い雲に覆われた空と、花の蕾が付いている桜の木を見続けた。



「何いじけてんだよ。」


「---っ…」


風に運ばれ、大好きな心の香りが強くなると同時に、大好きな温もりに包まれた。


「だっ、だって…」


後ろから突然抱きしめられ、肩に顎を乗せた心と顔が近く、恥ずかしくなった私の頬は赤い。


「--話…-ちゃんと聞いてくれない…」


お腹に回っている心の腕に自分の手を重ね、心の顔を見ようと首を捻った。



「やっべぇな…」


肩から顔を上げ、ジッと顔を見た後に苦笑いを浮かべた心は、腰に手を添え私の体を回転させ正面にした。

正面を向いた私の額に、コツンと心の額が重なった。


「そんな顔されっと今すぐ押し倒したくなる。」


伏せ目で甘い声を出す心に、胸がドキドキ高鳴る。

そして、


「あおの横は落ち着くんだ…」


と続けた。


伏せている目を開き、視線を上げた心と視線が絡み合う。

綺麗な漆黒の瞳に魅入っていると


「話はちゃんと聞いてるから。」


と言った後に口角を上げた。