TRIANGLE〜恋の二等辺三角形〜

予想外の優しい彼女の言葉になんて答えたらいいかわからず、浩介は赤い顔をしたまま黙って目を逸らした。

真智子の口から出た“ごめんね”が自分の気持ちに対する返答ではなく、気付かなかった事に対する謝罪だった事に心の中で感謝する。

「仲直り、してくれる?」

真智子が手を差し出して言うと、浩介は小さく頷き素直にその手を握った。

「よかった。ありがとう、浩ちゃん」

真智子のすっきりしたような明るい声が、鉛のように重くのしかかっていた罪悪感を綿毛のように軽くしてくれる。

ありがとうはこっちの台詞だよと浩介は思ったが、口には出せなかった。

「帰ろっか」

浩介に笑いかけ、鞄を手にして立ち上がった真智子はふと気が付いたように白いベンチに目を落とした。

「このベンチ、あの頃なかったよね」

「……うん」

「あの頃、誰かを特別に好きになるって気持ちを知らなかったみたいに」

浩介はベンチに座ったまま、黙って真智子を見あげた。

本当に、どうして人は誰かを特別に想うようになるんだろう。

「ああ、そうだ」

二人の間に漂い始めた微妙な空気を打ち消すように、真智子は大きな音をたてて手を叩いた。