「どうしたー浩介ー」
「なんだなんだ、修羅場かー?」
旅館の大部屋に戻ってきた浩介の頬にくっきりと平手打ちの跡が残っているのを見て、クラスメイトは何やかやと囃し立ててきた。
「ま、おれモテるからね〜」
そう言って適当にはぐらかし、浩介は隅の方に居る和也の所へ向かった。
真智子は和也が好き。
……和也は?
はっきりしてしまうのが怖いような気もしたが、どうしても確かめたかった。
和也の気持ちを。
「もろストライク、だね」
和也は楽しそうに笑いながら、冷やしたタオルを浩介に手渡した。
「なぁ、和さん」
冷えタオルを頬にあてながら、浩介はなるべく自然さを装って聞く。
「和さん、誰か好きな奴いる?」
思いきって聞いた浩介の質問に、和也は一点の曇りもない爽やか極まりない笑顔で答えてくれた。
「いないよ」
――そんなあっさり言うなよ。お前の事好きな奴がいるのに。てか、気付いてないのか?
「……だって、誰かを好きになるってどういう事か、どんな気持ちなら“好き”になるのか、よく分からないから」
口にしている台詞にそぐわない明るい笑顔で和也は付け加える。



