『それで、その国の姿を見た神様は、その国に馬鹿長げえ箸を持って来たんだ。』


『そして神はこう言った。“この箸を持って食事が出来る様に成りなさい”ってな。』


俺は理解力に欠けて居たらしく、全然この物語の主旨が分からなかった。


それで俺は再び勇に尋ねた。


『ねぇ、その国の人達はお箸が使えないの?』


俺がそう尋ねると勇はこう言った。


『いや、その国の人達も、箸くらいは使えたけどな、その神様が持ってきた箸は長かったんだ』


首を傾げた俺を見るなり、横に成っていた勇は起き上がり、台所へ歩いて行った。


勇は台所からすぐに戻ってきた。


台所から戻ってきた勇の手には“サエバシ”が握られていた。


そして、サエバシを俺に渡しながら、勇はこう言った。


『このサエバシよりも、ずっと長げぇ箸だったんだぞ』


『え?このお箸よりも?』

『そうだ』


『登美也、お前ならこの箸でどうやって飯を食う?』

俺は考えた、幼い俺が知恵を絞ってやっと出て来た答…俺はその答を実戦する為に、台所にある冷蔵庫まで走った。


俺は冷蔵庫からソーセージを取り出し、それを皿に入れて勇の前に持って来た。

その俺の様子を見た勇は少し笑いながら、こう言った。


『じゃあ食って見ろよ』

俺は、普通の箸ですらまだ完全に使い熟せる訳では無かった。


だから、そんな俺からしたら、サエバシでソーセージを掴むのに苦労した。


俺の小さい手から、何度も落ちるサエバシ…


やっとサエバシを持てても、今度はサエバシで掴んだソーセージがツルンと滑り落ちる。