―PM.11:00―


俺は眠りから目覚めた…


俺は咄嗟に部屋の時計を目で追った。


気が付くと夜の11:00過ぎ。


俺は、部屋中を見て勇さんの姿を探した。


しかし、部屋中の何処を見ても勇さんの姿は無かった。


俺は俺が思い付く限りの事をした。


部屋に貼ってあるカレンダーを見て、勇さんの仕事の依頼内容を確認した。


更にその日一日の依頼人の連絡先を調べて電話を掛けた。


しかし、どの依頼人の仕事も全て終わらせていた勇さん。


今日の依頼人の人は残り1人と成った。


俺はその依頼人に電話しようと受話器に触れた瞬間、家に電話が掛かって来た。


プルルルルル


俺はすぐに受話器を取り、耳に当てた。


『ハイ。毎度ありがとうございます、笠原なでも屋です。』


『ご依頼内容……』


俺の言葉を途中で遮る電話の相手。


『すみません、こちら若葉病院です。』


病院


俺はそう思いながら、受話器から聴こえる話し相手の言葉を聴いた。


『笠原勇さんのご家族の方ですか?』


『は、はい。』


俺は動揺しながらも必死に電話の対応をした。


『お、勇さんに何か有ったんですか』


その後の会話は余り覚えては居ない。


ただ、俺が病院に着いた時には、もう既に勇さんは“この世には居なかった”っと言う事。


俺は今まで世話に成った、たった一人の家族の最後を看取る事も…御礼の言葉も言えずに勇さんは俺の前から去って行った。



病院(霊安室)


俺の目に映った光景は、まるで寝ているかの様な勇の姿だった。


『なんで……なんで俺を…』


『なんで勇さんまで俺を置いて行くんだよ…』


俺は、言葉に出来ない程の感情が込み上げて来た。


俺は泣き疲れて、気が付くと霊安室で眠りに着いていた。