『そして、ある雨の日に、昔の俺の様に捨てられたお前を見付けた。』


『俺は考えた…』


『このままお前を“サツ”に届けるか…』


『だが、“サツ”に預けたらお前がどんな人生を送るかは手に取る様に分かった。』


『なら、俺がこの手で“育てよう”って決めた。』


『お前に…お前見たいなガキに俺みたいな思いをさせたく無かったのかも知れ無ぇなぁ。』


俺は、勇の話しを聞き、驚きを隠せなかった。


そう驚いた表情の俺を見て勇はこう言った。


『でもなぁ、お前は決して“不幸”では無ぇぞ』


『不幸じゃない?…』


俺はそう勇に質問した。


すると勇はこう答えた。


『確かに、親が居ねぇってのは“不便”かもな…』


『けどな…“不便”と“不幸”は“イコール”じゃ無ぇ。』


『むしろ、お前が自分を捨てた“親”なんかのせいで悩み、悲しむ事の方が“不幸”だと思うぜ。』


『んな事…当の昔に過ぎちまった事だろ?』


『んな昔の事で、お前が苦しむ必要なんてのは“何処にも無ぇんだ”』


『だから、もう過ぎた事は振り返るな』


『前を向いて歩け』


『“前を向いて歩く”?』

『そうだ…昔のお前も良くよそ見をしたり、下を向いて歩いて転んでただろ?』

『だから“前を向いて歩け”』


『俺もそうして来た』


そう言いながら、勇は笑った。



俺はこの日、初めての勇を一杯見た。


初めて見た“悲しそうな”勇。


初めて感じた“暖かい勇の腕”。


初めて聴いた“昔の勇”の話し。


初めて見た、“優しい笑顔”の勇。


そして、俺は改めて思った。


“この人”に拾われて“幸せ”だったと…