また君の笑顔で、僕の世界を鮮やかな色に染めてくれないか。



「今日はもう上がって良いからね。」



ふふ、と微笑む店長は。何処かクロさんを思い出させた。僕は店長に渡されたメモ用紙を見つめながら、カリンの一枝をぎゅっと握り締めた。



「…有難う、ございます。」



メモに書かれた文字は、僕が逢いたい人が居る場所。

ペコリ、と店長に頭を下げると僕は。歪む世界を掻き消す様に走った。

あァ、モノクロの世界が。君に近付く度に消えていく。



「…藍さん!」



居なくならないで。