「女風呂、ノゾキにイクしかないっしょ」
背中側から、はしゃいだ声が上がった。
なんで高校の修学旅行が京都なんだよ、と文句ばかり言っていた彼らが、一番楽しんでいるようだ。
荻窪はひとり、窓際に置いてあった椅子に腰掛け、旅館の外を眺めていた。
順序良く整列した歴史を感じさせる建物の屋根に、五月雨が降り注いでいる。
鉛色の空から垂れる雫は止む気配がない。
天気予報によれば、この修学旅行中はずっと降り続けるようだった。
「おい、荻窪」
声をかけられ、荻窪は振り向いた。ジャージ姿の男3人組が、目をぎらつかせていた。
ひとりはデジタルカメラ、別のひとりは懐中電灯、もうひとりは旅館の案内図を持っている。
「俺っちたちは女風呂ノゾキにイクけど、荻窪はイカないよな?」
行くわけないよな? という口ぶりに、荻窪はやはり、とため息をついた。
ノゾキに行きたいわけではない。
だが、普段仲良くしているメンバーから外されるのは、複雑だった。
「……………………うん」
しかたなく、返事をした。仲良くしていたければ、反論しなければいい。
なにも考えず相手の思うまま、うんうんと返事をしていれば、平和は保たれるのだ。
背中側から、はしゃいだ声が上がった。
なんで高校の修学旅行が京都なんだよ、と文句ばかり言っていた彼らが、一番楽しんでいるようだ。
荻窪はひとり、窓際に置いてあった椅子に腰掛け、旅館の外を眺めていた。
順序良く整列した歴史を感じさせる建物の屋根に、五月雨が降り注いでいる。
鉛色の空から垂れる雫は止む気配がない。
天気予報によれば、この修学旅行中はずっと降り続けるようだった。
「おい、荻窪」
声をかけられ、荻窪は振り向いた。ジャージ姿の男3人組が、目をぎらつかせていた。
ひとりはデジタルカメラ、別のひとりは懐中電灯、もうひとりは旅館の案内図を持っている。
「俺っちたちは女風呂ノゾキにイクけど、荻窪はイカないよな?」
行くわけないよな? という口ぶりに、荻窪はやはり、とため息をついた。
ノゾキに行きたいわけではない。
だが、普段仲良くしているメンバーから外されるのは、複雑だった。
「……………………うん」
しかたなく、返事をした。仲良くしていたければ、反論しなければいい。
なにも考えず相手の思うまま、うんうんと返事をしていれば、平和は保たれるのだ。