病室の前に立つと、
女のすすり泣く声が聞こえた。
ガチャッ。
ドアが開いた音に反応して、
振り返る顔は、
涙で濡れていた。
「…あ、すいません…」
女が謝る。
「……こいつの女か」
髪は長く細く、
ロングスカートを身に纏い、
大きな目をして、
ふわりとした印象の女だった。
「…あっ、はじめまして!
相原舞っていいます!
一応、槙原君の彼女です」
若干声が震えていた。
泣いたせいなのか、
俺に怯えたのか。
よくわからないが、
なんかこういう奴は
傷つけちゃいけない気がした。
「…勝田伸也。」
「お友達ですか?」
…。
「…違う。
昔の知り合いだ。
ついでに寄っただけで」
「そうなんですか」
言葉を遮られて気づいた。
無口なはずの自分が、
とても早口でペラペラと
喋りかけていたことに。
彼女から
大事なものを奪いかけ、
ずたずたに傷つけたであろう
この俺が。
