どれほどしただろう。数秒? 数十秒? もしかしたら数分かもしれない。
私は赤くなった顔が恥ずかしくてずっとうつむいたまま。
なのに彼から目をそらすこてもできなくて、ただ重なった指をじっと見つめていた。
激しくなり続ける鼓動は、警鐘のように脳に響く。
その音が目の前のこの人に聞こえてしまいそうだ。
吐息を感じられるほどの近距離。
私は、肌で感じる彼の存在と、目に見える指だけで、思考を停止させられたのだった。
落ち着け、私。
そう言い聞かせる。
別に何もないのだ。
目の前にいるのはやんごとなき身分の方とかそういったものじゃない。
ただ偶然、それこそ偶々、列車でぶつかっただけの相手。
そう! ただの偶然! 別に運命とかじゃない。
……運命?
いや、ないって。それはない。運命と偶然はニアイコールであって、同じじゃないんだから。
…………でも、もしかして、もしかする?
そう考えるとますます血が頭に上り始めた。
身体中の血を全て頭部に集中させているような気さえし始めた。
あ〜もうどうしたら良いの〜!
誰か教えてぇえええ!
「……あの」
「ひ、ひゃいっ!」
声が全力で裏返ってしまった。
確かに誰かに助けて欲しかったけど、当の本人から声をかけられるなんて……。
でも、私は残りカスのような理性を総動員して、冷静に見えるよう努めた。
「な、なんでしょう?」
若干、言葉がスムーズでないことを除けばパーフェクトな対応だった思う。
直前に裏返ったとは信じられない穏やかな声色に、柔和な微笑みもセットなのだ。
10人が10人、満点をくれるだろう。
それなのに、である。
目の前の彼はひどく困った顔をしていた。
まるで、何かを探すような表情。
私は、黙って彼の言葉を待った。
そんな私を見て、彼は意を決したようだ。
鳶色の澄んだ眼で私を真っ直ぐに見据えて、
「列車、行っちゃいましたよ?」
「……」
「……あの、列車」
「…………」
「……あの」
「……しぃまったぁああああああああああっっ」
私は赤くなった顔が恥ずかしくてずっとうつむいたまま。
なのに彼から目をそらすこてもできなくて、ただ重なった指をじっと見つめていた。
激しくなり続ける鼓動は、警鐘のように脳に響く。
その音が目の前のこの人に聞こえてしまいそうだ。
吐息を感じられるほどの近距離。
私は、肌で感じる彼の存在と、目に見える指だけで、思考を停止させられたのだった。
落ち着け、私。
そう言い聞かせる。
別に何もないのだ。
目の前にいるのはやんごとなき身分の方とかそういったものじゃない。
ただ偶然、それこそ偶々、列車でぶつかっただけの相手。
そう! ただの偶然! 別に運命とかじゃない。
……運命?
いや、ないって。それはない。運命と偶然はニアイコールであって、同じじゃないんだから。
…………でも、もしかして、もしかする?
そう考えるとますます血が頭に上り始めた。
身体中の血を全て頭部に集中させているような気さえし始めた。
あ〜もうどうしたら良いの〜!
誰か教えてぇえええ!
「……あの」
「ひ、ひゃいっ!」
声が全力で裏返ってしまった。
確かに誰かに助けて欲しかったけど、当の本人から声をかけられるなんて……。
でも、私は残りカスのような理性を総動員して、冷静に見えるよう努めた。
「な、なんでしょう?」
若干、言葉がスムーズでないことを除けばパーフェクトな対応だった思う。
直前に裏返ったとは信じられない穏やかな声色に、柔和な微笑みもセットなのだ。
10人が10人、満点をくれるだろう。
それなのに、である。
目の前の彼はひどく困った顔をしていた。
まるで、何かを探すような表情。
私は、黙って彼の言葉を待った。
そんな私を見て、彼は意を決したようだ。
鳶色の澄んだ眼で私を真っ直ぐに見据えて、
「列車、行っちゃいましたよ?」
「……」
「……あの、列車」
「…………」
「……あの」
「……しぃまったぁああああああああああっっ」

