「いただきまーーっす」


頬杖をつきながら朝食をつまむ渡辺健人を見据える。


昨日は散々だった。


酔っ払った渡辺健人が道端で戻すことには至らなかったものの。


なだれ込むように私の家にあがりこみ、トイレを支配。


出てきたと思ったら、勝手にソファに倒れこみ爆睡。


「そんな見つめないで下さいよーーってかどれもこれもうまいっす」


別にただ皿に盛っただけよ、と心の中で皮肉をいう。


「そう、ありがとう」


特に表情は変えぬまま言葉を発したつもりだったけど、なぜだかその言葉に満足したように渡辺健人はニコニコしながらあたしを見つめ返した。


「俺、亜紀さんのこと本当に好きです、てか大好きなんです」


「い・・いきなり」「会ったばっかりで正直、亜紀さんの知らないところもいっぱいあると思います」

朝からこんな漫画みたいなシチュエーション、頭がついていかない。


「だけどもっと知りたい、いろんな亜紀さんを知りたいって思うんです!だから厚かましいかもしれないけど、俺のことも知ってください!」


昨日からコイツに圧倒されまくりの私。


とりあえず頷いてしまった自分に、数秒後、嫌気がさした。