固いイスでも、背中を預けることができるだけでホッと一息つけた。

宮内マキは、かばんからお茶のペットボトルを出すと一口飲み、前のイスについている簡易なテーブルを倒してその上に置いた。

朝早く家を出て、会社で先輩と打ち合わせをした。
先輩の仕事の都合が着かなくなり、急遽、今日の出張には一人で行くことになった。
それが決まってからのマキは、何だかずっと落ち着かない気持ちだった。
一人での出張は、初めてだ。
何度資料を読んでも、取材の内容を確認しても、やっぱり緊張は取れない。

落ち着いてやれば、きっと大丈夫…。
緊張し過ぎはよくないわ。
新幹線に乗っている間だけでも休まなくちゃ…。

マキは、気持ちを沈めるために目を閉じた。