「…覚えてない」 真面目な顔で答えると 波琉は眉間にシワを寄せてまた顔を近づけた。 「拓馬が授業に集中してないなんて珍しい…」 一樹じゃあるまいし。 と付け足した。 「病み上がりなんでしょ? 風邪、まだ治ってないんじゃない?」 何かを読み取ろうとするように じっと見てくる波琉に 慌てて顔を逸らした。 「大丈夫だって」 「本当にぃ~?」 「本当に!」 波琉の目力に 心の中までよまれないように 背を向けて離れた。