いつもと同じように朝が来た。

眠りにつくのが遅かったせいか、少し胃が痙攣していたのを覚えている。

ボクは朝食は、いつも取らない。今もそうだ。

ボクの愛車の赤い自転車に股がり、約束の場所へとペダルを漕ぐ。

何も変わらない平凡な月曜日。


学校までは片道13kmだが、行きは下りが多いので、もう慣れたものだった。

上田橋を渡り、二つ目の道に入ると約束の場所だ。

時刻は7時45分を示していたが、ボクの時計は5分進んでいるので、正確には7時40分。
20分も早くついてしまったようだ。


緊張のオブラートは、ボクを包んだまま、 解放してくれそうにない。


道端にある小さな石ころを蹴って時間を潰した。


千曲川のせせらぎが
微かにここまで、聞こえる。


他の通学者達は、まるで、映画のエキストラ役のように、ボクにとっては、背景にすぎない。



500mぐらい先に彼女らしき人がぼんやりと姿を見せたのは、確実に8時より、早い事だけは覚えている。



「キタ!」