「少しずつでいいんじゃない?」
少しずつ、素直になれば。
「………そうだな」
「そうだよ………ねぇ、慧斗」
「ん?」
「慧斗は、医者になるの?」
目線よりも上にある慧斗の顔を見上げる。
慧斗は、そうだな、とあたしの頭に手を伸ばした。
「聞いたかもしれないが、兄貴以外は医者だ」
だから、必然的に俺も医者の道を進むのだろう。
「兄貴みたいにやりたいこともないしな。とりあえず、大学は医学部に進もうと思う」
「それでいいの?」
「どうだろうな。大学に行ってる間に見つけるかもしれないしな」
今は、何もないから、と慧斗は言う。


