「あの子、苛立ってるの」
お母さんの代わりに由紀子さんが言葉を紡ぐ。
「苛立ってる?」
「理由は2つ。一つは素直に喜べないこと」
私が帰ってきたのをね。
「どうして………」
「さぁ?よく分からないわ………まぁ、喜んでくれてるからいいわ」
例え口に、言葉にしなくても。
「2つ目は、混乱してるのね」
「混乱?」
「見ての通り、お父さんと私は医者……医者の家系なの。」
お兄ちゃんは、別の道に行っちゃったけどね。
「あの子は、お兄ちゃんみたいに別の道が見えないのよ」
だから、自分も医者になるのだろうと決めつけてここまできた。
「きっと、あたしの言葉に、心乱れちゃったわね」
由紀子さんの心乱れされる言葉?………夢?


