「なぁ、俺には何も隠すな」


な?と優しい目で見下ろされた。
あたしは、右目を押さえ、小さく唸る。


もし、真実を話したら、慧斗はどう反応する?
今、この瞬間の穏やかさが無くなるのは確実で、あたしはこの時間を壊したくない。


でも………


あたしは、真っ直ぐに慧斗を見た。
いつか慧斗のその顔も見られなくなる。どうせなら、タイムリミットまで忘れないように刻み込んでいきたい。


―――全てを委ねるべきじゃなかったのかな


「………あたしの右目ね、全く見えないんだ」

「……え」

「小さい頃事故で、ね」


あたしは嘘をついた。
最初で最後の嘘を。


「もう見えないし、いっかっ的なノリでカラコンつけたの」


ズキズキと胸が痛む。
嘘をつくのはこんなにも苦しいんだね。