「遠矢は、月が好きなんだよ」


頬を膨らませたあたしに見かねた慧斗が教えてくれた。


えっ好き?


「でも、遠矢………」

「あれは、慧斗にヤキモチ妬いてたの」

「俺は、妹にしか見えないって言ってんのに」


ヤレヤレと慧斗はため息をついた。


そっか……そうだったんだ。


あたしは、もういない二人の背中を追うように見つめていると、俺達も帰るぞと慧斗に抱えられたまま外に出た。


外は、すっかり暗くなっていて月が明るかった。


古い倉庫だったそこは、今にも崩れそうなくらいにに古かった。こんな場所に自分が捕らわれていたのかと思うと、身震いする。


それに気付いてか慧斗は、ギュッと少しだけ力を入れた。
まるで、大丈夫だと言うように。