「ほんとは、あの雨の日――」







ふわっ






一瞬、香ったと思ったら、次の瞬間にはもう、その香りに包まれていた。



突然のことに、初めてなわけでもないのに、まるでそれをされたのが初めてな女の子みたいに、あたしはガチガチに固まってしまった。


(さ、相良、くんに)


信じられない。
今日が、本当に信じられない。



(抱きしめられてる…?)









足りない、と強く思った。

二人の肌同士を遮るものが。



ワイシャツ二枚だけじゃ

カーディガン二枚だけじゃ

ブレザー二枚だけじゃ、



足りない。

心音が届いてしまう。





破けそうに高鳴る心臓に、目まぐるしく循環する血液に

卒倒しそうになる。

だけど二度も馬鹿するか、と
根性で意識を手放さないようにスカートを強く握りしめた。


手の平に、スカート越しに、
爪の跡がつくよりも強く。