「返すよ、必ず返す」


少し、

興奮したように、焦ったように、大きくなってしまった声量に自ら驚いたというように、急いだ口調で、まるで取り繕うように彼はそう言った。


…その声であたしの思考は満たされて、好きなはずの雨音も、もう耳に入らない。

なんて威力なんだ、と感心してしまう。


「でも…」

「借りたものは返す」


胸を張るように言い切られて、ぐっ、と言葉に詰まってしまった。

それを見てか、彼はクスクスと笑い出した。



(かわいいな…)



惚けてしまう。

なんだか今日は、彼のいろんな表情をたくさん見ることができる。


(嬉しい)


それが、すごく楽しい。

ワクワクする。

ドキドキする。




胸が、ときめく。

(幸せだ)