私が作ったのは、「彼」だった。

完成した「彼」は、私の手をとり、行こうと言って立ち上がった。

初めて現れた異質な存在に、たくさんのワタシはみなそれぞれ、自分の今していることを忘れて鏡で髪を直したり、塗りなおす口紅を探してポーチをごちゃごちゃしていたけど、

「彼」は私以外には目もくれず、私だけをまっすぐ見つめて微笑んだ。


その様子をみて、ワタシ達は悔しそうに泣いていた。




私と彼は、仲良く二人で列車を降りる。

駅が見えてきた。

さっき乗ったはずの、帯広駅のホームが。


私は、ここへ導いてくれたワタシを探してもう一度車内のほうに振り向いたけど。



もう、どれだかわからなかった。

私が座っていたはずの席にも、また誰かが作った「ワタシ」が座っていたから。