その笑みは僕をも安心させる笑みで、変わらない景色と同様に僕を安らぎへと誘う笑みで。


僕は再び、喜びを噛み締める。





帰って来たのだな、僕も。


愛する家族と過ごす土地に。






「もう少し、お時間がかかる滞在かと思っておりましたわ」

「僕が早く帰りたくなりました」




頭を掻く僕を見つめ、おかしな人と妻は微かに声を立て笑う。





「ですが、お戻り下さって安心しました。お正月も近いので、お義母様があなたにと新しい着物を縫って下さっておりますの。丈を合わせたいとおっしゃっておりましたから」

「それは嬉しいですね」

「大掃除にも、男手のあなたが居て下さらないと困りますし」

「…………」




それは嬉しくないな。






仕方ない。

これも家族の為なのだろうな。




箪笥の移動も障子の張り替えも、畳干しも庭の掃き掃除も……。





考え、軽く眉を潜める僕の前では、妻が良かったと笑う。


瑞江さん…良かったのは大掃除ですか?






…いいでしょう。

新しい着物との交換労働としますよ。





あまり深く考えない事で、僕は自分を納得させた。