「ああ、そうだな…俺の子供達だ。何よりも大切な宝だからな」





笑う先輩の瞳には、新しい光が見えていた。






笑おう。


笑って、貴志君を語ろう。




今を、未来を、思い出と共に抱きしめて笑いましょう。






僕達は親だから、父親だから、世間のしがらみに捕われてしまう事もある。


それでも愛しい家族がいて、育むべき存在があるならば、僕達は強くなれるんです。






心は、受け継がれていくのだから。







もう、先輩は悲しみに沈む事は無い。

溺れる事も無い。




先輩は確かに、貴志君の手を掴んだのだから。







悲しみの雨は、止んだのだ。


これから少しずつ、雨雲も流れていくに違いない。








太陽が顔をだせば、大地は乾く。


そうしたら、芽吹く季節が訪れる。







椿も、美しい花を咲かすに違いない。






そう思い、笑った、











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