舞ちゃんは元気良く頷き、笑顔を表情に広げた。


白くて丸い頬が、嬉しさから微かに朱色を帯びる。




良かった。

心から、そう思う。




「そういや、宗久の所の息子はいくつだったかな」

「五歳です」

「じゃあ、舞が一年お姉ちゃんね」

「一つ上の女房は金のわらじ履いてでも捜せと言うなぁ。舞、宗久の息子の金のわらじになったらどうだ?」



そう言い先輩は、あははと豪快に笑う。



僕も笑っていいのだろうか…。



「いや……うちは独特な家なので。舞ちゃんが苦労してしまいますよ」

「苦労?」

「はい……」




多分、義母に………。




夫の僕でさえ、彼女には毎日叱られていますから。










来た時と同様、先輩が駅まで車で送ってくれる事になり、手を振る皆と別れ、僕は帰路に着く。





心地良く揺れる車内、小さくなっていく赤島の屋敷をサイドミラー越しに見つめていると、自然と笑みが漏れた。



役目が果たせたのだな。




安堵の溜息と共に、自分の中にある余韻を体外に吐き出した。





もう、心配はいらない。



この家族は大丈夫。



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