そう、もっと笑っていい。

安心していいんだ。




君は家族に、たくさんの愛しさや幸せを与えたのだから。


それを誇りに、胸を張って逝けばいい。





僕が必ず伝えるから。

必ず導くから。




だからもう、小さな胸を痛めたりしなくていいんだ。



何も、心配しなくていいんだよ。








貴志君の笑顔に安堵し、僕は椿の木を見上げた。


その枝に手を伸ばす。




細い枝…。






そうだな。

お前もよく頑張っていたね。

こんなに痩せてしまう程に身代わりになり、貴志君の魂を守っていたんだね。






「あと少し、ひと踏ん張り出来るかい?」




僕の問いに、椿は細い枝を揺らした。



その葉の隙間に見えた小さなそれは、貴志君の為にとの椿の覚悟。


僕に力を預けるとの、椿の心。






ああ、お前は優しいね。


一緒に、貴志君を送ろうな。







呼び掛けに、椿はカサリと葉を擦り合わせ返事をした。











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