その鮮明すぎる記憶は、未だ悲しみを深くしている。

もがいでももがいでも、空が見えない。


まるで、先輩自身が溺れているかの様に。





「貴志は、何かを言いたげだった…その声が、俺達には聞こえないんだ……」

「……僕なら聞こえる、と」

「ああ……宗久に聞いてもらいたいんだ。もしも…貴志が淋しいと言うなら……俺が傍に行ってもかまわないから……」

「……先輩」




貴志君は、そんな事は望まない。


だが、今それを伝えたとしても、それは貴志君の言葉では無く僕の言葉となる。


だから、言えない。






貴志君の声を、届けなければ。

直接、届けなければ。



それ以外、両親を、貴志君を救う方法は無い。







出来る。

詳しく家を見てからにはなるが、僕になら出来る。



そう、確信した。









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