「親に捨てられた子供達が、どんな目で、どんな思いで、どんな苦しみを抱えて生きているか、あんたは見たことがない」
目の前に立つシルバーブロンドの男のことなど、「チィネエ」はなにも知らない。
悪い人間ではないのかもしれない。
けれど今、モラルなどなにもかもをぶっ壊して、もう一度ぶん殴ってやりたかった。
「…なにも知らない奴らは平気でそんなことを言うんだ。子供ひとり育てることがどれだけ大変か。たかが偽善で、そんなことやり遂げられるわけもないのに」
こんな風に言われるのは珍しいことでもない。
デリケートな問題に手を出している限り、こういった中傷や批判は必ずついて回る。
―――けれど。
「あの子達を預かって、有難いと思ったことなら何度だってあるよ」
ふるり、と「チィネエ」の肩が震えたのを見て、頬を殴られた怒りなど湧く前に萎んでしまった。


