ラヴレス











「綺麗事を口にしたとして、結局は子供をダシに使っているのは君達だ。支援の申し出は、君達にとっても有難い話だろう」


キアランとて莫迦ではない。

ここまで言って何になる、と解っていながら、目の前で自分を仇と言わんばかりに睨み付けてくる女性に、負けたくはなかったのだ。




―――バキッ。



しかし、キアランを次に襲ったのは「言葉」ではなく「暴力」だった。

産まれてこの方、理不尽に殴られたことのないキアランは、じんじんと痛む頬を意識して、呆然。

ビンタじゃない。

グーパンだ。

「チィネエ」の尖った拳の骨が頬骨を抉って、痛い。





「…有難い、ね」


ぽつり、と彼女が洩らした声は掠れていた。

なにも知らない人間に、端から口を出されることほど腹立たしいことはないだろう。

今しがた、キアランの美しい頬を殴った拳を力一杯握り込み、堪えている。