『王子様は、白馬に乗ってお姫様を迎えに来たりしないのよ』 幼い頃、母はそう口にした。 シンデレラの絵本を抱える私を、穏やかな瞳で見つめながら。 じゃあ、なにに乗って迎えに来るの?と無邪気に尋ねた幼い私は、それはそれは無垢で無知で、可愛らしかっただろう。 母は答えた。 『リムジンよ』 女手ひとつで娘ひとり育てた彼女は、とてもシュールな母だった。