キアランの言葉を受けて、音で聞くより明らかに智純の表情から色が消えた。

間に挟まれたソフィアが、不穏な空気におろおろとふたりの顔を見比べている。
部屋の入口に控えていたジンは、またやった、と言った顔を呆れたように手で隠す。



「……」

智純とキアランが膠着状態のまま、それでも食事は運ばれてくる。

生ハムとルッコラのサラダ、じゃがいもとコーンのポタージュ、焼きたてのロールパンにクロワッサン、老舗が作る味わい深いバター、鯛と冬野菜ののマリネ、牛肉のソテーにはラズベリーソース、デザートにはパティシエご自慢のフルーツスコーン。

キアランは飛び出した言葉を回収することも弁解することもできないまま、ただ黙ってパンを口に運び、智純は不機嫌を隠すこともなく、サラダのルッコラにフォークを突き刺しむしゃむしゃと草食動物のように口を動かす。


「…もう少し淑やかに食べたらどうなんだ、折角作ってくれたシェフが嘆くぞ」

そんなもしゃもしゃと口を動かす智純に、キアランの口は止まらない。
少しでも癪に障れば、小言を言わずにはおれないらしい。


「黙れ、小姑」

そして智純のこれである。

食堂の剣呑さは、熾烈を極めた。