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智純にとって、食卓というものは戦場だった。
作った端から食卓に料理を運び、つまみ食いをする不埒者が居ないか目を光らせ、その間にも人数分の箸、湯飲みを用意し、騒いで走り回る子供達を叱りつけて自分の座布団に着かせる。
全員揃ったのを確認し、じいさんにいただきますの合図をしてもらう。
育ち盛りやんちゃ盛りの子供達は、いただきますを合図に獣の如く口の中に料理を流し込むのだ。
べちゃべちゃとテーブルに食べかすが落ちるのなんてお構い無し。やはり叱る。
やがて好物を狙っての子供達の喧嘩が始まり、それをゲンコツで諌めつつ、じいさんはじめ子供達のおかわりを次から次へとついでいく。
たまに珍しく手伝いにくるやつが居たら要注意だ。手伝いと見せかけて、朝ごはん用に残してあるおかずを狙っている。
だから智純にとって、食事を囲むというのはハードな運動にも相当するものなのだ。
―――だからか、今のこの食卓には慣れそうになかった。


