俺が身勝手に別れようと言ってから、葵からは何回もメールや電話が来ていた。
でも俺は、葵の口から直接答えを聞くのが怖くて
……逃げていた。
やっぱり俺は葵が好きだから。
だからこそ…
葵の為なんて口では綺麗事を言っていたけど
本当は葵から捨てられるのが怖くて
いつか誰かに取られるんじゃないかって
俺から離れていってしまう気がして
怯えてた。
だからあの時…
愁に言われたあの時、
すぐに別れるなんて言えたんだ。
葵の為なら……
そう言い聞かせながら
何度も後悔して振り返った。
「先輩はあたしのこと嫌いになっちゃったのかな……?」
「っ…」
嫌いになんかなってない
叫びたいのに、声は喉から風となって出てきた。
今…
もしも今
俺が葵を抱きしめたら…
世界はどう変わるんだろう…?
「…僕ちょっとトイレ。」
「うん。」
愁がいなくなって、葵は一人ポツンと俺のいる位置と反対側のベンチへと座った。
風の音だけが耳へと入ってきて、辺りはしん…と静まり返っている。
ふと、葵が鞄の中を探った。

