* * *


「…センセーいな…。」

「私、探してくるよ。」

「あーいいよ。そんなことまでしてくれなくて。雨音は授業に戻んないと。」

「でも…私のせいだから…。」


淡々と紡がれる言葉。
でもその端々に、彼女の想いが見え隠れしている。
…彼女の瞳の奥には…優しさが溢れている。


「違うよ。雨音のせいじゃない。」

「だって昨日…。」

「俺が勝手に気になって、俺が勝手に雨音に傘を押しつけただけだから。
で勝手に風邪ひいた。そんだけ。」


一気に言い過ぎた。
…雨音が少しきょとんとした顔で俺を見つめている。


「そんなに『勝手』なの?霧夕くんって。」

「え?」


反応するのはそこか?とか色々思ったけど、そんなことよりも少し上目遣い(本人は絶対に無自覚)で見られたことに、異常なくらい心臓がドキドキいってる。
…鎮まれよ、心臓。頼むから。


「霧夕くん?」

「あ…ホント、大丈夫だから。雨音は授業行って。」

「私はっ……霧夕くんっ!!」



ぐらっと視界が歪んだのを最後に、俺の意識は途切れた。