「あ…雨音…。」

「体調…悪いの?」

「んなことない。だいじょーぶだいじょーぶ。」

「…顔赤いし…フラフラしてる。
保健室行くの?」

「少し休みに行くだけだから。」

「…私も行く。」

「え?」


…今のは幻聴?
だっておかしいだろ?
あの雨音が…保健室の付き添い?


「昨日傘を貸してくれたお礼に。」


そう言った彼女の表情は確かに無表情だった。
だけどその奥には…
あ、もちろん俺の思い違いの可能性大だけれど、少しだけ心配してくれているような気持があるようにも感じた。


…彼女は決して『冷たく』なんかない。
ただ…見せていないだけ。その優しさを、想いを。
もしかしたら、見ようとしていないだけなのかもしれない。


フラフラする俺の右腕が不意に掴まれる。


「え…?」

「危ないから。」


保健室まで、俺たちにそれ以上の会話はなかった。