* * *


…案の定と言うべきか。
とにかく俺は風邪をひいた。
熱はない…と信じたい。

でも、傘を貸した次の日に俺が休めば、それはそれで気に病むんじゃないかとか、無駄なことをいちいち考えてた。
だから学校に来たとも言える。



「…なんか顔赤い。」

「マジ?そんなに分かる?」

「熱あんの?」

「ないと信じてる。」

「信じるな。今すぐ保健室行け。」

「…行きたくな…。」

「いいから行け。」


…こういう時のユウは少し怖い。
でもその迫力に気圧されて、俺は渋々席を離れた。
朝から保健室行くとか、俺…何しに来たのか分かんねぇ…。

…つーか頭痛ぇ。
そう思って頭を抱えた。


「…っと…やべ。フラフラするんだけど…。」


廊下の壁に手をつく。
この冷たさが心地いいなんて、相当身体が熱い証拠だ。


「霧夕くん。」


不意に後ろから声を掛けられた。
…声で分かる。
彼女から声を掛けてきたのは、生まれて初めてだ。